卵管鏡下卵管形成術(FT)とは?効果や費用など解説
当院では卵管鏡下卵管形成術(FT)をはじめとした外来手術を行っています。
卵管性不妊症について
不妊の原因は、大きく「女性因子」「男性因子」「両方の因子」に分けられます。女性因子のなかでも卵管に原因のある卵管性不妊症は、約3割とも言われています。
卵管の役割
卵管の長さは約10cm、直径は約1~1.5cm程度です。
役割としては以下のようなものがあり、妊娠が成立するのにはとても大切な器官です。
- 卵巣から排卵した卵子を、卵管の先にある卵管采でつかまえる
- 子宮側から来た精子を卵管采側へ運ぶ
- 卵管の中で出会った精子と卵子が受精する場所
- 受精卵が発育する場所
- 受精卵を子宮まで運ぶ器官
卵管性不妊症の原因
卵管性不妊症は、卵管が閉塞または狭窄していることが原因です。
このため、卵子と精子が受精することができなくなり、自然妊娠の可能性が低くなってしまいます。
自然妊娠するには、卵管を拡げる治療「卵管鏡下卵管形成術(Falloposcopic Tuboplasty:FT)」を行うことが必要です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)とは
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、卵管を開通させて自然妊娠を望みたいという方に行う治療法です。
卵管が閉塞または狭窄していることで卵子や精子が卵管を通過することが困難である卵管性不妊の患者様を対象にした内視鏡治療になります。
具体的には、カテーテルと呼ばれる細い管を腟から子宮、そして卵管入口まで挿入し、カテーテル内に内蔵されたバルーンを卵管内で押し進めることで詰まった卵管を拡げます。
卵管鏡下卵管形成術(FT)についての詳細動画
FTのメリット
自然妊娠および人工授精での妊娠成立が期待できる方法のため、治療の選択肢を広げることができます。
卵管不妊因子があるが、年齢が若く卵巣予備能も高い方は、体外受精へ進む前のステップとして試してみる価値がある治療法と言えます。「卵管閉塞しているから、体外受精でしか子どもはできない」と診断を受けた方も、FT後に自然妊娠することがあります。
さらに、卵管鏡下卵管形成術(FT)は健康保険、高額療養費制度が適用されますので医療費の負担を軽減することができます。
FTの効果
卵管鏡下卵管形成術(FT)の実施による妊娠率の改善や効果(人工授精やタイミング法との妊娠率の比較など)は 卵管の開通率が90%以上で妊娠率は20%~35%、効果はおおよそ半年間継続すると報告されています。術後の卵管再閉塞は3ヶ月で約5%です。
FTの副作用
- 麻酔の副作用で吐き気やふらつきがある場合があります。
- 軽い腹痛や出血、発熱がある場合があります。
- 稀に腹腔内に出血をおこし、入院を必要とする可能性があります。
卵管鏡下卵管形成術(FT)の手順
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、月経が終了してから排卵日までの間に行います。 手術にはFTカテーテル(直径約1mm)と呼ばれるバルーンを内蔵し先端に卵管鏡がついた器具を用います。
細い管を膣から子宮、卵管入口まで挿入し、カテーテルに内蔵されたバルーンを卵管内に推し進めることで卵管を拡張し、閉塞や狭窄した卵管の通過(疎通)性を回復させます。同時に卵管鏡(内視鏡)により卵管内腔の状況を観察します。
メスなどによる切開を行うことなくカテーテルを挿入するため、身体への負担が少ないのはもちろん、治療時間も30~40分程度なので外来での治療が可能です。
実際の手術
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1. カテーテルを子宮へ挿入
FTカテーテル(直径約1mm)を膣から子宮へと挿入し、卵管鏡で卵管の入り口を確認します。
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2. バルーンを卵管へ伸ばし加圧する
カテーテルのバルーンを卵管の閉塞部まで伸ばしていき、バルーンを加圧しながら、閉塞部を押し広げます。
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3. 卵管の状態を確認
閉塞部を開通した後、卵管の状態を卵管鏡(内視鏡)で確認し終了です。
注意事項
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、月経が終了してから排卵日までの間に行います。
妊娠の可能性がある場合は手術を行うことが出来ません。そのため手術までは避妊をしていただきます。
Q&A
費用について
卵管鏡下卵管形成術(FT)は通常、下記費用が窓口で必要な自己負担額になります。
- 片側の治療:約14万円(※健康保険3割負担の場合)
- 両側の治療:約28万円 (※健康保険3割負担の場合)
高額療養費
上記の通り、卵管鏡下卵管形成術(FT)は、健康保険適用の手術ですが保険点数が高いため、自己負担額も高くなります。
その場合に利用できるのが高額療養費という制度です。高額療養費制度とは、医療機関等の窓口で支払った額が、1ヶ月あたりの上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給するというものです。
FTは高額療養費制度の対象です
卵管鏡下卵管形成術(FT)は高額療養費制度の対象となりますので、窓口でのお支払いは以下の自己負担額限度額までとなります。
※高額療養費制度を利用するには、ご加入の医療保険にご自身で手続きをしていただき、認定証の交付を受け、窓口でご提示いただく必要があります。
※自己負担限度額は、個人の所得額に応じて異なります。
所得区分 (標準報酬) |
自己負担限度額 (目安) |
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月額83万円以上 | 約260,000円 |
月額53万~79万円 | 約170,000円 |
月額28万~50万円 | 約90,000円 |
月額26万円以下 | 約60,000円 |
低所得者 (住民税非課税等) |
約36,000円 |