受精卵の育ちが悪い・着床しないという患者様へ。精子からのアプローチ
公開:2020.03.18 最終更新:2020.05.21
検査・治療法男性不妊お知らせ
こんにちは、桜十字ウィメンズクリニック渋谷培養室長の楠本です。
受精卵の育ちが悪い・着床しないというのは、体外受精を行っている方にとって大きな悩みとストレスではないでしょうか。受精卵の育ちが悪い・着床しない原因のひとつに「精子の状態が悪い」ということが言われています。
精子の状態は精液検査によって精液量、精子濃度、運動率、奇形率などの項目で表されていますが、通常の精液検査では評価されていない “精子のDNA損傷” は受精や胚発生の異常のみならず、着床障害や流産の原因となることが明らかになっています。
当院では、体外受精を行っても胚がなかなかうまく育たない患者様のために、良好な精子を回収して使用するための新しい器材を導入しています。
これは微細孔を持つ専用の精子セパレーターで、これを用いて精子を精製することで、精子DNA損傷の割合を大きく下げることが可能です。
この精子セパレーターは精子に損傷を与えるとされる化学物質や遠心分離機を使うことなく、最も運動性のある機能的な精子の抽出を可能にするというものです。
通常の精子精製方法と比べて活性酸素種発生のリスクを減らすことで酸化ダメージを減らし、DNA断片化を最大80%減らすことができるとされています。
この表は正常な精液所見の精子と乏精子症の精子のDNA断片化率を見たものです。
DNA断片化の割合は、正常な精液所見の精子の原精液で14.7%、乏精子症患者の精子では23.1%です。
これが精子セパレーターによる処理でDNA断片化の割合が減っていることがわかります。
一般的に行われている密度勾配遠心法でも原精液より値は減少していますが、精子セパレーターの方が大きく値を減らしていることがわかります。
当院では主に精子データが悪く、胚の成長が良くない患者様にこの精子セパレーターの使用をお勧めしています。
Zymotスパームセパレーターはご希望制となっていますので、興味のある方は当院スタッフまでお声がけください。
また、精子のDNA損傷検査も当院で行うことが可能です。こちらもご希望の方はスタッフにお声がけください。