【院長ブログ】体重(肥満度指数BMI)と妊娠までの期間の関係について
公開:2020.12.04
研究結果基礎知識
こんにちは
桜十字ウィメンズクリニック渋谷院長の井上です。
妊娠前の肥満度指数(BMI)と妊娠までの時間の関係を調査した報告をご紹介いたします。
Fertility and Sterility
”Couples’ prepregnancy body mass index and time to pregnancy among those attempting to conceive their first pregnancy”
合計2,301,782組のカップルで22歳以上(平均27.32歳)の男性パートナーと20〜49歳(平均25.72歳)の女性パートナーで妊娠歴のない、月経周期のある方を対象としています。
BMI:低体重(<18.5 kg / m 2)、正常(18.5–23.9 kg / m 2)、過体重(24.0–27.9 kg / m)、および肥満(≥28.0kg/ m 2)に分類しています。
カップルは3か月ごとに電話で妊娠したか調査されました。
<結果>
女性の低体重、過体重、肥満と男性の低体重は、カップルの妊娠までの期間が長いことと関連していた。 妊娠までの最適なBMIは、女性が20.61〜23.06 kg / m 2、男性が22.69〜27.74 kg / m2でした。
交絡因子を調整後、お互いのBMIと妊娠しやすさ(オッズ比)を比較したところ、正常なBMIどうしのカップルと比較すると下の表のようになっていました。
(男性)
正常 1.00 0.91 0.94 0.81
低体重 0.96 0.90 0.88 0.70
過体重 1.03 0.97 0.99 0.83
肥満 1.00 0.95 0.94 0.81
女性のBMI値 正常 低体重 過体重 肥満
この表から正常BMIの女性と過体重の男性の組み合わせが妊娠しやすく、肥満の女性と低体重の男性の組み合わせが一番妊娠しにくいことがわかりました。
まとめ
女性や男性のBMIは、初回妊娠カップルの妊娠までの期間延長と関連していました。 カップルのBMIの管理は、生殖能力を改善する可能性があるという報告でした。
理由として女性側は、過体重/肥満が卵母細胞の数と量の減少をもたらし、視床下部-下垂体-卵巣系に影響を及ぼし、不規則な排卵、さらには無月経につながる可能性がある。また 、肥満女性の生殖能力は、性的頻度の低下や性的機能不全のために低下する。 低体重状態は、黄体期の短縮を通じて女性の生殖能力に悪影響を与える可能性があると報告されています。
男性側は、過体重/肥満が、射精量、精子濃度、運動率、さらには精子の生殖能力の低下をもたらし、また、精子形成を調節するホルモンレベルの変化、精巣温度の上昇、脂肪組織に蓄積された環境毒素、酸化ストレスレベルの上昇、および勃起不全の発生率の上昇により、肥満男性の生殖能力の低下が起こったと報告されています。
今回の報告は正常BMIの女性と過体重の男性のカップルが妊娠しやすいという結果でしたが、なぜ過体重男性が妊娠しやすいかは書かれていませんでした。
非妊娠時の体格や妊娠中の体重増加量によって、出生児の体重及び妊娠高血圧症候群、帝王切開、分娩時大量出血のリスクに関係があります。妊娠成立にも妊娠後の経過や胎児だけでなく、ご自身の健康のためにも適正体重を試みた方がよさそうです。