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培養4日目の胚の空胞の存在が妊娠率に影響する?

公開:2019.03.14 最終更新:2021.03.12

研究結果

こんにちは

桜十字ウィメンズクリニック渋谷院長の井上です。

今回ご紹介する報告は

“コンパクションの時期に空胞を認めた場合、胚盤胞率、妊娠率、生児獲得率の低下する可能性があるかもしれない。“

というものです。

Fertil Steril. 2018年6月に発表された

“Good-quality blastocysts derived from vacuolized morulas show reduced viability”

になります。

空胞の有無と妊娠率

この空胞の定義は液体で満たされた球形の膜結合細胞質封入体というものです。細胞質内封入体は細胞質内精子注入(ICSI)時に人工的にできることがありますが、ほとんどの空胞は自然に発生します。空胞は大きさが異なり、直径が小さいほど消滅する可能性が高くなります。しかし、大きな空胞や複数の空胞は分裂時に融合する傾向を示します。

培養0日目における空胞化の存在は~5%と推定され、2~3日目(2—8細胞期)は約2%と低く、4日目にピーク(11%)に達するといわれています。

この前向き研究はピークを迎える培養4日目の胚の空胞の有無が妊娠に影響するか検討しました。

<調査概要>

  • 424例を対象にICSI後4日目胚の空胞形成の具合で3グループに分けています。
    グループ1:すべての桑実胚に空胞あり
    グループ2:すべての桑実胚に空胞なし
    グループ3:その他
  • プロトコールはアンタゴスト法(75%)、またはLong法(25%)で新鮮胚移植を行っています。
  • 女性の平均年齢は32.8±5.5歳、男性は(36.0±7.2)でした。
  • 胚盤胞率、妊娠率、生児獲得率を調査。

<調査結果>

グループ1は5日目の胚盤胞形成率が低下し、良好胚盤胞が有意に少い結果でした。さらに妊娠率および生児獲得率はグループ2およびグループ3と比較して有意に悪い結果でした。

<考察>

空胞の数と大きさは胚の発生に有害である可能性が非常に高いと思われます。

大きな空胞は紡錘体を変位させることがあり、これは受精障害や分割異常をもたらすと考えられます。特に注入された精子が中央に位置する空砲の近くに存在すると精子頭部の脱凝縮を防ぎ大きな空砲が受精に影響を及ぼすことも見出されました。その後、胚の空胞化による細胞質量の減少により、胚盤胞で細胞数減少の可能性があります。マウスでは細胞質を分極できず、胞胚腔の代わりに空胞を産生することが示唆されています。タイムラプス画像検査において空胞化されたコンパクション胚や桑実胚が翌日に空胞のない胚盤胞になることもみられています。

培養5~6日目で観察し空胞のない胚盤胞にみえても、発育の過程で実は空砲が存在していた可能性もあります。そのため4日目胚をタイムラプスで観察し、空胞をみることで胚盤胞が正常に見えても、妊娠しにくい胚である可能性も否定できません。

この報告だけではなんとも言えませんが、症例数を増やした追加報告が待たれます。