AIベースのスコアリングシステム「iDAScore」の導入
公開:2024.02.29
お知らせ
こんにちは、桜十字ウィメンズクリニック培養部です。
今回は当院で昨年末から導入されたAIスコアリングシステムについてご紹介します。
EmbryoScope+ タイムラプスインキュベーター
2018年の開院時から当院では、体外受精のほぼ全症例でVitrolife社のEmbryoScope+というタイムラプスインキュベーターを使用しています。このインキュベーターには顕微鏡とカメラが内蔵されていて、インキュベーター内で胚を培養している間、10分毎に胚の写真を自動撮影し、コマ送り動画として成長過程を確認することができます。また胚評価のサポートを目的として、それぞれの胚に対してスコアを算出することが可能です。
KIDScore
当院では、今までもKIDScoreと呼ばれる、胚の分割時間を手動設定することでスコアが算出されるシステムを使用し、胚評価の補助として、凍結や移植に適した胚を選択する際に活用していました。しかし近年、iDAScoreという完全自動スコアリングシステムが登場し、当院でもそちらを導入することになりました。
iDAScoreとは
iDAScoreはタイムラプスで得られた連続画像をAIが完全自動解析し、個々の胚に対してスコアを1~9.9の範囲で算出してくれます。スコアが高いほど妊娠する可能性が高いことを示し、異常受精や可能性の低い胚も識別することができます。
このスコアの利点は、一貫性をもって完全に客観的な評価ができるということです。今までの形態評価やKIDScoreといった胚評価法ですと、評価した人の主観がどうしても含まれます。
例えば、同じラボ内でも経験レベルや能力、作業負荷による時間的制約、また同じ胚培養士でもコンディションによっては評価に多少のブレが生じてしまう可能性があります。その点iDAScoreは、評価に関してマニュアルで行う作業がないため、主観や外的因子による影響を受けずに評価を出すことができます。
こうした人為的バイアスのかからない評価によって、iDAScoreは着床率・生児出産率とのより高い相関を得られることが報告されています。特に高スコア群で精度の高い相関があるため、見た目での評価が同等の良好胚盤胞が複数あった場合に、iDAScoreを指標にすることでより妊娠・出産の可能性が高い胚を選択することができます。
今後は当院でもこちらのスコアを使用し、より患者様の結果に繋がる胚の選択を行っていきたいと思います。