魚介類を多く食べる妊活カップルは妊娠が早い?
公開:2018.09.20 最終更新:2024.05.30
不妊と食事生活習慣
桜十字ウィメンズクリニック渋谷培養部です。
暑かった(というよりも熱かった?)夏が終わり、『食欲の秋』を迎えようとしています。
秋は美味しいお魚が台頭してくる季節でもあり、秋刀魚や鮭、鯖は秋の魚として有名ですが、夏と思われがちなウナギやハモには2度の旬があり、初夏に一度目、秋頃に二度目の旬を迎えるそうです。
そんな、美味しいお魚をたくさん食べたら、もしかしたら妊娠確率がUPするかもしれない(?)興味深い最新の研究が米国学術誌The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, Volume 103, Issue 7, 2018に掲載されていましたのでご紹介いたします。
妊活カップルの食生活の調査
米国ハーバード大学公衆衛生大学院のAudrey J Gaskins博士らの研究チームは、2005~2009年にアメリカ国内で保健福祉省の協力の下実施された大規模調査である『不妊と環境に関する長期的調査』に参加し、その際の調査結果から妊活中だったカップル計501組の食生活に注目しました。
本研究ではカップルの生活習慣を1年間にわたって細かく追跡調査し、食生活とセックスの回数について記録と検討を行いました。その結果、女性の排卵周期(約一ヶ月の間)ごとで魚介類を8回以上摂取したカップルは、0~1回しか摂取しなかったカップルよりも1年以内の妊娠率が高かったと報告しています。また、魚介類を週に2回以上食べたカップルの92%が1年以内に妊娠し、さらに魚介類の摂取量が最多だったグループが1年以内での妊娠確率が最も高かったとしています。
オメガ3脂肪酸
明確な証拠は明らかとなってはいませんが、魚介類に多く含まれる“オメガ3脂肪酸”が男女ともに生殖能力を高める効果があるという可能性は先行研究からも指摘されており、Gaskins博士は本研究を「妊娠の可能性を高めるための新たな証拠と位置付けたい」と述べており、本研究を取り上げた米国の女性雑誌Bustleのインタビューに対し、「妊娠への近道は、“寿司”を食べることかもしれない」とも語っています。また、本研究では、排卵周期ごとで魚介類を食べる回数が多いカップルほど、セックスの回数も多かったと指摘しています。
先行研究から特に高齢の夫婦において積極的に魚介類を摂取する夫婦ほど健康指数が高く、将来的に狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患や心臓病になるリスクが低いことは知られていますが、Gaskins博士はカップル間での食事の「タイミング」についても検討しています。
というのも、魚介類を食べる回数が多いカップルほど一緒に食事を摂る回数が多かったことから、男女ともにオメガ3脂肪酸を同時に摂取出来たことが妊娠確率の向上に繋がり、そして一緒に食事を摂るなどカップルで過ごす時間が多かったことで結果的にセックスの回数も増えたのではないかと考察しています。
この“オメガ3脂肪酸”ですが、そもそも脂肪酸には牛肉・乳製品・卵黄に多く含まれる飽和脂肪酸と、魚・ナッツ類・大豆に多く含まれる不飽和脂肪酸があります。この不飽和脂肪酸の中でも、体内で作ることができず、食事などで摂取する必要がある必須脂肪酸が“オメガ3脂肪酸”です。
最近では、オメガ3脂肪酸を多く含む「亜麻仁(アマニ)油」や「えごま油」などが有名になってきましたが、オメガ3脂肪酸は熱に非常に弱いという性質を持っており、約70℃を超えた状態で長時間加熱し続けると過酸化脂質という有害物質に変化(発がん性物質を活性化させると指摘されている)し始めます。したがって、オメガ3脂肪酸を含んだ油で揚げ物などをするのは非常に危険です。
インターネットで料理を紹介するようなページを見ていると、亜麻仁油で炒め物をするような料理も紹介されており驚愕してしまいましたが、積極的に摂取する場合には、正しい知識の下で料理に使うようにしましょう。