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【図解】不妊原因になり得る「高プロラクチン血症」 について解説

公開:2018.10.15 最終更新:2024.09.05

基礎知識検査・治療法妊娠疾患

桜十字ウィメンズクリニック渋谷検査部です。

今回は不妊原因の排卵因子の一つである高プロラクチン血症について、図を用いながらお話ししたいと思います。

プロラクチンとは?

プロラクチンとは脳の下垂体で分泌されるホルモンで生理作用としては妊娠中に乳腺を発達させたり、産褥期(出産後6~8週間の期間)に乳汁の産生を促進するホルモンです。

プロラクチンは乳児から乳首を刺激されることによりたくさん分泌されます。乳首への刺激は子宮を収縮させ、産後の子宮の回復を早める働きがありますが、仮にこの期間に妊娠してしまうと母体への負担だけでなく、子宮が収縮し、お腹の子供に早産などの危険が伴うため、またすぐ妊娠することがないようプロラクチンが排卵を止めるようにコントロールしています。

プロラクチンとは

高プロラクチン血症とは?

高プロラクチン血症とは授乳期間中でないにも関わらず、血中プロラクチン濃度が通常よりも高くなってしまうことです。妊娠・産褥期以外の時期に何らかの原因でプロラクチンが上昇すると排卵が障害されたり、無月経や稀発月経が起こり、不妊へとつながってしまいます。

プロラクチンはどのように身体に作用しているのでしょうか?

プロラクチンの分泌

上図のようにプロラクチンは脳の下垂体から分泌されていますが、その分泌は脳の視床下部からでる放出抑制因子 PIF(Prolactin Inhibiting Factor)と放出促進因子 PRF(Prolactin Releasing Factor)により調節されています。主なPIFはドパミン、主なPRFは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン TRH(Thyrotropin Releasing Hormone)です。

プロラクチン値が高くなる原因

通常はドパミンなどのPIFによる抑制のほうが優位に働いているため、プロラクチン値は正常に保たれています。しかし、ドパミンを抑えるような作用があるお薬(抗うつ剤や消化器薬 等)の服用によって、プロラクチンを抑制する作用が弱まるとプロラクチンが基準値よりも高くなり、高プロラクチン血症になります。

また、何らかの原因で甲状腺機能が低下すると、それを補おうと甲状腺ホルモンを分泌させる作用があるTRHがたくさん分泌され、TRHの上昇に伴いプロラクチンも上昇して、高プロラクチン血症になってしまいます。

さらに、プロラクチンを産生する細胞が異常増殖してできるプロラクチノーマという腫瘍が下垂体にできた場合も通常よりプロラクチンが産生されることにより高プロラクチン血症となります。

加えて、プロラクチンが上昇することにより卵胞を育てるホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)や排卵を促すホルモンである黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑制されてしまい、その結果、排卵が障害されたり、無月経になってしまいます。

以上のようにプロラクチンは様々なホルモンと相関しながら存在しており、高値になると妊娠を邪魔するホルモンの一つです。プロラクチン濃度は採血で調べることができ、血液検査によりプロラクチンが高値で不妊への影響が大きい場合はまずこの治療から始めます。

当院では院内にある機械でプロラクチン濃度を即日検査可能ですので、不妊期間が長くなる前に一度受診をおすすめします。