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夜間の騒音が男性不妊の原因に!?

公開:2018.11.08 最終更新:2021.01.13

男性不妊生活習慣

桜十字ウィメンズクリニック渋谷培養部です。

当クリニックに通院いただいている方や当クリニックの妊活オープンセミナーにご出席いただいた方はご存知かと思いますが、クリニックの真向かいでは現在2019年秋の開業に向けて「渋谷PARCO」が建設中です。

日に日に鉄骨の柱が大きくなり、だんだんと形作られていく中でたまに工事現場ならではの“大きな音”がクリニックの中まで響いてくることがあります。普段はあまり気になりませんが、妊活オープンセミナーの真っ最中に鉄筋がぶつかり合う『ドカーン!!!!』という音が響くと「今はちょっと勘弁してくれー(汗)」と思うこともしばしばです。

今回はそんな“騒がしい環境”が、もしかしたら男性不妊に深く関わっているかもしれないという海外の最新研究が、環境汚染分野などの研究をまとめた国際学術誌Environmental Pollution, Volume 226, 118-124に掲載されていましたのでご紹介したいと思います。

夜間の騒音と男性不妊の関係

韓国のソウル大学で予防医学を研究しているKyoung-BokMin博士は、騒音環境(特に夜間)への長期間の暴露が男性不妊と密接に関係している可能性について示唆しています。

騒音は環境汚染の一つと考えられており、先行研究から循環器系疾患や精神疾患などの健康問題と深く関連していることが指摘されています。また、産婦人科分野に焦点を当てると、長期間の騒音環境への暴露によって流産や早産が引き起こされる可能性も数多く報告されています。
(※International Journal of Environmental Research and Public Health, 2014 Aug; 11(8): 7931–7952. Gordana Ristovska博士らの研究ほか)

55db程度の騒音でも不妊の原因に?

本研究でKyoung-BokMin博士らの研究チームは、55dBという比較的低レベルの騒音でも長い期間にわかって暴露されると男性不妊を発症する原因になると指摘しています。

55dBとはWHOが定める夜間騒音レベルで真夜中に家の前を車が「サーッ!」と走り抜けていく音がだいたい55dB程度と考えてください。ちなみに電車に乗っている時の音や渋谷センター街の喧騒がだいたい70~80dB程度です。

Kyoung-BokMin博士らの研究チームは、国民健康保険データベースから得られた20歳から59歳の男性206,492人を対象として2006年から2013年までの8年間にNational Noise Information Systemが報告している騒音レベルに関するデータを掛け合わせて分析を行いました。

さらにその中から不妊症の診断を受けた3,293人を抽出し、騒音レベル・騒音への暴露期間と男性不妊との関連性を調査しました。すると、長期間に渡って55dB以上の騒音に曝された男性ほど、男性不妊と診断される可能性が有意に高かったことが示されました。また、年齢・BMI・生活習慣などの背景を揃えた場合、夜間に騒音にさらされていた男性ほどその傾向が大きかったとしています。

論文の共著者でソウル大学で公衆衛生学を研究しているJin-YoungMin博士は「不妊には環境汚染など普段生活する上での予期せぬ問題が悪影響を与えている可能性が高く、近年、公衆衛生上の大きな問題になっている」と述べるとともに「動物レベルでは高い騒音レベルの環境に暴露されることで、繁殖力に悪い影響を及ぼすことが示されていたが、この研究は初めてヒトの男性不妊症と環境騒音との関連性(危険性)を示したものである」と締め括っています。

睡眠の質と不妊

夜間に騒音にさらされることが不妊の原因となる可能性については、眠りが妨げられることによる睡眠の質の低下や心身に加わるストレスが深く関わっていることが考えられます。

騒音が睡眠の質を下げることは確かであり、米国生殖医学会が発行する生殖医学誌Fertility and Sterility, Vol. 108, No. 3, Supl, 2017においても、睡眠の質と不妊の関係性について報告されています。

夜眠っている時に「ピーポーピーポー」と救急車がサイレンの音を響かせながら家の前を通ったり、バイクのマフラー音が「ブンブンブンブン」と鳴り響いていたりすると、ついつい目を覚ましてしまったという経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、それが毎日毎日繰り返されるならば、そういった騒音への暴露が不妊の原因になり得るかもしれません。

生活環境を変えるとなると大変に難しい課題が山積みになりますが、静かでリラックス出来る環境の方が健康にも妊活にも良い働きをすることは間違いなさそうです。