コーヒー・カフェインは妊娠や不妊治療に影響する?
公開:2018.12.03 最終更新:2021.02.04
研究結果不妊と食事生活習慣
渋谷バースクリニック培養部です
12月に入りグッと寒く感じる季節になってまいりましたが、体調など崩されていませんでしょうか?
この季節になるとコンビニや自動販売機では青い「つめた~い」の表示から赤い「あったか~い」の表示が増えて、冷えた身体を温めるためにホットの缶コーヒーなどを飲んでしまうという方も多くいらっしゃると思います。また、普段から仕事の合間などにコーヒーや紅茶、ココアなどの温かい飲み物で一息入れるという方も多いのではないでしょうか?
コーヒーを飲み過ぎると不妊治療や妊娠に悪影響?
コーヒーやココアにはクロロゲン酸やカカオポリフェノールと呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれており、その強い抗酸化成分からアンチエイジング作用や脂肪の消費量が増加する効果などが知られている他、コーヒーの香り成分には豆の種類によって集中力を高めたり、反対にリラックスさせたりする効果もあるようです。
そんな健康にとって良い働きをすると考えられえているコーヒーですが、飲み過ぎてしまうと不妊治療や妊娠にとっては大きな悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
今回は2012年のヨーロッパ生殖医学会ESHREで発表された演目、ならびに公衆衛生学分野で高い評価を受けている学術誌Public Health Nutritionで2015年に発表された論文を取り上げていきたいと思います。どちらも少し古い題材ではありますが、双方とも世界的に一定の評価を得ている発表ですのでご紹介いたします。
一日に5杯以上のコーヒーを飲む患者は臨床妊娠率が約50%低下
デンマーク・Aarhus Universitet病院付属IVF(体外受精)センターのUlrik Schi-ler Kesmodel博士らの研究チームは、過度なコーヒーの摂取がIVF治療の成功率を著しく低下させると示唆しています。
先行研究からカフェインやアルコールを摂取するほど妊娠までに長い期間を要することなどが示されていましたが、不妊治療との関連性についてはこれまで明らかとなっていませんでした。
本研究でKesmodel博士はデンマーク国内で不妊治療を行っている患者3,959人を対象として年齢、体格指数、生活習慣、および治療成績などについての大規模な統計解析を行いました。
その結果、一日に5杯以上のコーヒー(またはカフェインを多く含むお茶など)を摂取していた患者は5杯未満の患者(全く摂取しない患者を含む)と比較して臨床妊娠率が約50%、出生率が約40%低下することを示しました。
Kesmodel博士は「先行研究より妊娠成立におけるカフェインやアルコールの影響が示されていたことからこの結果に対する驚きは無かったが、その影響の大きさについてはさらに探究しなければならない」と述べるとともに、「過度なコーヒーの摂取による妊娠への悪影響は喫煙による有害レベルに匹敵する」との見解を示しています。
カフェインが妊娠中の母体へ与える影響
また、アイルランド・University College Dublin栄養生命科学ユニットの疫学者Ling-Wei Chen博士は、カフェインの摂取が妊娠中の母体へ与える影響についても指摘しています。
Chen博士らの研究チームはカフェインが与える母体への影響について過去に報告されている複数の研究を取りまとめ、対象となった被験者をランダムに抽出して低量摂取グループ、中量摂取グループ、高量摂取グループにそれぞれ分類し、各グループについて妊娠合併症や流産率などのリスク統計解析、ならびに用量反応解析を行いました。その結果、母体のカフェイン摂取量が高くなるほど妊娠合併症や流産のリスクが有意に上昇することが示されました。
Chen博士は「潜在的な患者背景の影響を取り除くことが出来ないため、バイアスがかかっている可能性もある」としながらも「母体のカフェイン摂取量が高いほど妊娠喪失のリスクが高くなることは信憑性が非常に高く、摂取に際してはガイドラインを遵守することが賢明である」と述べています。
WHO(世界保健機構)やFSA(英国食品基準庁)ではコーヒーだけでなく、紅茶、ココア、コーラやエナジードリンクにも高用量のカフェインが含まれているとして注意を呼びかけるとともに、妊娠中ではコーヒーの摂取をマグカップ2杯程度に留めるべきであると見解を示しています。
Kesmodel博士はESHREでの講演の最後に「コーヒーについての文献は限られているので、女性を不必要に心配させたくはない」と述べていますが、Chen博士同様にガイドラインに基づいて過度な摂取を避けるように呼びかけています。
温かいコーヒーやココア、紅茶、緑茶などが美味しく感じる季節ではありますが、女性、特に妊娠を考えていらっしゃる方はなるべくデカフェやカフェインレスのものを選ぶなど、カフェインを取り過ぎないように少し注意をしてみたほうが良いかもしれませんね。